韓国の大統領警護庁、捜査本部との対決姿勢継続 政府機関対立で混迷深まる未曽有の状況

韓国の大統領警護庁、捜査本部との対決姿勢継続 政府機関対立で混迷深まる未曽有の状況

 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の逮捕状を巡り、合同捜査本部と大統領警護庁の対立が続いている。韓国の複数メディアは、週内にも捜査本部が逮捕状の執行に踏み切る可能性を指摘しているが、警護庁は阻止の構えを崩さず、政府機関同士の衝突が懸念される状況だ。合同捜査本部は、高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)や警察などで構成される。警察は11日、尹氏の逮捕執行を妨害した疑いで、キム・ソンフン警護庁次長に出頭を要請したが、キム氏はこれを拒否した。

 キム氏への出頭要請はこれで3度目となった。キム氏は声明で、「職務代行中のため一時も職場を離れられない」と反論し、徹底抗戦の構えを見せている。警察はキム氏への強制捜査の実施を検討しているとのことだ。

 韓国日報によれば、キム氏は元国防相の金龍顕(キムヨンヒョン)氏に近い強硬派とされる。逮捕状の執行が実行されれば、警護庁と合同捜査本部が正面衝突する可能性が高まっている。合同捜査本部は周到な準備を進めており、警護庁職員と尹氏の逮捕はそれぞれ公捜庁と警察が主導する計画だという。

 3日の執行試みは警護庁の阻止により約5時間半で中断し批判を受けたが、再挑戦では公邸周辺に拠点を設けて長期戦を視野に入れる案が検討されている。阻止が再び続く場合、現職大統領逮捕という韓国史上初の事態を前に捜査本部は戦略の抜本的見直しを迫られる見込みだ。

 警察は11日、朴鍾俊(パクジョンジュン)前警護庁長を再度事情聴取。逮捕状請求の可能性も視野に入れている。政治的には、尹氏逮捕に反対する保守系与党「国民の力」と逮捕状執行を求める左派系野党「共に民主党」が鋭く対立している。政府機関の緊張状態は、この与野党間の断絶に起因している。

 「国民の力」権寧世(クォンヨンセ)非常対策委員長は、「大統領逮捕は国の名誉を傷つける」と批判。一方、「共に民主党」は「警護庁は崩壊寸前。尹氏の逮捕は時間の問題だ」との声明を発表し、対立が深まる一方だ。

 尹氏の職務を代行する崔相穆(チェサンモク)副首相兼企画財政相は、「捜査機関と警護庁がここまで対立するのは前代未聞」とし、与野党協議による特別検察官の任命を求めた。しかし、政治的断絶が続く中、解決への道筋は見えていない。