レバノン議会は9日、レバノン軍司令官ジョセフ・アウン氏を新たな大統領に選出したとロイター通信が報じた。2022年10月に前大統領の任期が終了して以来、政党間の対立により後任が決まらず、空席が続いていた。新大統領の選出により、長期にわたる政治混乱の収束に向けた一歩となった。レバノンでは2023年10月、親イランのシーア派組織ヒズボラがイスラエルと戦闘を開始し、9月には地上侵攻へと発展した。11月末に停戦合意が成立したが、ヒズボラは指導者ナスララ師を含む幹部多数を失った。さらに12月には、イランから武器を供給していたシリアのアサド政権が崩壊し、ヒズボラはさらに弱体化した。
ロイター通信によれば、これらの情勢変化を受け、ヒズボラとその支持勢力はこれまで推してきた大統領候補への支持を撤回。こうした譲歩がアウン氏の選出につながり、ヒズボラの影響力低下が明らかになった。アウン氏は就任演説で、軍事力は国軍に限定されるべきと強調し、イスラエルとの停戦合意を「尊重する」と明言。「国境管理強化のため軍備を増強する」との方針も示した。
宗教や宗派が入り混じる「モザイク国家」のレバノンでは、大統領はキリスト教マロン派、首相はスンニ派、国会議長はシーア派から選出される。議席も宗派ごとに配分が決められている。
ヒズボラとイスラエルの戦闘では、昨年11月27日に60日間の停戦が発効。期限内に南部から双方が撤退し、レバノン軍が治安を担うことが決まった。現時点で大規模な戦闘再開はないが、双方が「停戦違反があった」と主張しており、緊張が続いている。