厚生労働省は、マイナンバーカードに健康保険証の機能を追加した「マイナ保険証」を活用し、子どもや難病患者などが医療費助成を簡単に受けられる仕組みを全国に広げる方針を固めた。この新しい制度は、2026年度以降の全国展開を目指しており、現在一部の自治体で試験的に実施されている仕組みを基にしている。この導入により、患者や医療機関の負担軽減が期待されている。
現在の制度では、患者が医療機関や薬局で診察を受ける際、健康保険証と共に自治体が発行する受給者証を提示する必要がある。この受給者証は、自治体が特定の条件に該当する人々に医療費助成を行うための証明書だ。例えば、子どもや難病患者、ひとり親家庭の親子など、医療費の自己負担が軽減される対象者に発行される。しかし、これには紙の受給者証を持参し、窓口で確認手続きを行う必要があり、患者にとっても医療機関のスタッフにとっても負担となる場面があった。
新たな仕組みでは、患者が「マイナ保険証」をカードリーダーにかざすだけで、健康保険組合や自治体の医療費助成情報が自動的に確認されるようになる。これにより、紙の受給者証を持参する必要がなくなり、医療機関や薬局のスタッフが受給者証の情報を手入力する作業も不要になるだろう。
この仕組みは、2023年度から全国の183の自治体で先行して導入されており、今後は関係法令の改正を経て全国的に拡大される予定。これにより、医療費助成を受ける手続きがより簡便になるだけでなく、患者の負担軽減や医療機関の事務作業の削減にもつながるとされている。
また、現在の「マイナ保険証」の利用率はまだ低く、2023年10月時点で全体で約15%にとどまっている。特に20歳未満の利用率は7~8%程度とさらに低い状況だ。