ホームレスの4割が『今のままでいい』と回答|平均年齢63.6歳、高齢化進む

ホームレスの4割が『今のままでいい』と回答|平均年齢63.6歳、高齢化進む

 路上生活を経験し、その後ホームレス支援活動に携わるようになった男性がいる。その男性、三宅紀幸さん(56)は、かつて窃盗を繰り返して服役し、出所後も仕事を続けられず、ギャンブルにのめり込むなど、波乱に満ちた人生を歩んできた。しかし、そんな過去を乗り越え、現在はNPO法人「福岡おにぎりの会」(福岡市博多区)のメンバーとして、路上生活者を支える活動に取り組んでいる。

 去年12月27日の寒い夜、三宅さんは福岡市中央区の舞鶴公園で、湯気の立つ温かいシチューを手に路上生活者への炊き出しを行っていた。三宅さんが声をかけたのは、この公園で暮らす70代の男性。腰を痛めて寝袋に横たわる男性は、「シチューをそこに置いておいて」とだけ言い、少し冗談めかして「死んだらそこら辺に散骨しといて」とつぶやいた。それに対して三宅さんは「20年先の話ですよ」と返しますが、男性は「そんなに生きるもんか」とそっけなく答えるだけだった。

全国に2820人のホームレス、進む高齢化

 厚生労働省の調査によると、去年1月時点で全国のホームレスは2820人(能登半島地震で調査が未実施の石川県を除く)とされている。そのうち男性は2575人、女性は172人、防寒具などで性別が判別できなかった人は73人だった。都道府県別でホームレスが最も多いのは大阪府で856人、次いで東京都が624人、神奈川県が420人、福岡県が163人、千葉県が121人、愛知県が110人と続いている。

 起居場所についてのデータでは、都市公園が25.2%、道路が23.8%、河川が22.6%、駅舎が6.2%と、多くが屋外での生活を余儀なくされている。

 しかし、ホームレスの数が減少傾向にある一方で、高齢化は進んでいる。厚労省が2021年に実施した生活実態調査では、ホームレスの平均年齢は63.6歳。70歳以上の割合は34.4%に上り、5年前の調査から14.7ポイント増加した。このデータからも、高齢化が深刻な課題であることがわかる。

 また、今後の生活について聞いた調査では、「今のままでいい」と答えた人が40.9%と最も多く、「アパートに住み、就職して自活したい」と答えた人は17.5%、「アパートで福祉の支援を受けながら軽い仕事を見つけたい」と答えた人は12.0%にとどまった。

亡き母の言葉を胸に、奮闘する三宅さん

 そんな厳しい状況の中でも、三宅さんは路上生活者に寄り添い続けている。その支えとなっているのは、亡き母からもらった一通の手紙。そこには、「どんなに道を踏み外しても、やり直すことはできる。諦めないで」というメッセージが綴られていた。この言葉を胸に、三宅さんは自身の過去を乗り越え、同じように困難に直面している人たちを救おうと努力している。