昨年の元日に発生した能登半島地震から1年が経過した1月1日、甚大な被害を受けた石川県輪島市の観光名所「輪島朝市」では、多くの市民が集まり、発生時刻の午後4時10分に現地で黙祷が捧げられた。激しい揺れや大規模な火災によって壊滅的な被害を受けたこの地域では、公費による建物の解体が進み、現在では広範囲に更地が広がっている。当日は午後になると雨が降り始め、発生時刻に近づくにつれてその雨が一層強まると、集まった人々の間から「涙雨だ」との声が漏れる場面もあった。
輪島市朝市組合の冨水長毅組合長(56)は、地震が地域全体に与えた深い影響について「能登全体が悲しんでいる」と心境を語った。同組合は、地震後も地域の復興を目指して活動を続けており、昨年7月からは市内の商業施設で「出張朝市」を開催するなど、朝市の復活に向けた取り組みを進めている。冨水組合長は黙祷の場で「この1年、復興に向けてさらに努力したい」と犠牲者への思いを語り、地域の再生に向けた決意を新たにした。
雨が降りしきる中、多くの市民が輪島朝市を訪れ、花を供えたり手を合わせたりする姿が見られた。同市マリンタウンの仮設住宅に暮らす松岡江美子さん(79)は、1年前の地震当時、自宅が倒壊してその下敷きになり、近所の人に助け出された経験を振り返りながら、「家で黙祷するより、ここで手を合わせたかった」と静かに語った。松岡さんは、朝市に出店していた知人を地震で亡くし、その悲しみを胸に秘めながら花を供えた。
また、同市河井町で自営業を営む木下京子さん(63)は、高校時代の同級生が地震で犠牲になったことを悼み、持参した花を手向けた。「その同級生とは同じスポーツジムに通っており、よく顔を合わせていました。地震の前には共通の知人の話題で楽しく会話をしたことを覚えています」と語り、失った友人をしのぶ寂しげな表情を見せた。