1日、英国で新たな法律「デジタル市場・競争・消費者法」が施行された。この法律は、巨大IT企業が消費者や他の企業と公正な条件で取引を行うことを義務付けるもので、違反が確認された場合には、世界での年間売上高の最大10%という高額な制裁金が科される可能性がある。これは、欧州連合(EU)が既に施行している「デジタル市場法」に匹敵する厳格な規制であり、巨大IT企業に対する強い監視体制が英国でも始まることを意味している。
この法律の規制対象となるのは、世界全体での年間売上高が250億ポンド(約5兆円)以上、または英国国内での年間売上高が10億ポンド(約2000億円)以上の企業。具体的な対象企業については、英国の競争・市場庁(CMA)が今後指定する予定だが、米国のメタ(旧フェイスブック)やグーグルといった巨大IT企業がその対象になる見通しだ。
法律の具体的な内容としては、いくつかの重要な規制が盛り込まれている。たとえば、サブスクリプション(定額制)サービスにおける消費者に不利な契約条件の提示、自社製品を不当に優遇する行為、そして虚偽の口コミ投稿などが禁止される。また、これらの企業が守るべき行動基準として、記事やコンテンツの利用に対して適正な対価を支払うことなど、さらに具体的なルールが今後設定される予定だ。
この法律では、CMAの権限が大幅に強化され、不正な取引に対して迅速に介入できるようになる。CMAは、裁判を経ることなく制裁金を科す権限も持つようになり、違反が明らかになった場合には直ちに是正を求めることが可能。このような仕組みにより、消費者保護や市場の公正性がこれまで以上に強化されることが期待されている。