山形・山寺の訪日客、カード払い後に現金返金要求―入山料工面で土産店が困惑

山形・山寺の訪日客、カード払い後に現金返金要求―入山料工面で土産店が困惑

 クレジットカード決済後にすぐ返金を求める訪日客の存在が、土産店が並ぶ山形市山寺の門前町で問題になっている。立石寺の現金のみの入山料(大人300円)を工面するためで、土産店側は「断ることもできるが…」と困惑している。寺側では入山料を「お布施に類する」と捉えており、キャッシュレス化は導入せず、長年の精神文化を大切にしたい考えだ。地元からは「国が訪日客に寺社参拝の作法を周知すべき」との声が上がっている。

 県によると、山寺には2023年度約72万人が訪問。新型コロナ禍が収束し、現在は8、9割が訪日客だという。

 土産物・飲食店のえんどう本店では、昨年の紅葉シーズンから千円程度の商品をカード払い後に返品し、現金での返金を求める観光客が複数現れた。理由を尋ねると「入山料がないから」とのこと。カード決済は手数料が発生するため、店側は負担を抱えつつも善意で対応している。

 別の店舗でも同様のケースがあり、山門受付では現金がないため引き返す観光客もいるという。こうした事例は欧米豪からの観光客に多く見られ、現地ではカード決済が日常的なことが背景にあるとみられる。

 立石寺は現時点でカード決済導入の予定はない。清原正田住職(75)はキャッシュレス化の流れを認識しつつ「商業的な場所と思われたり、山寺が遊園地のように捉えられないか懸念がある」と話す。

 立石寺では雪玉を投げたり凍った石段を滑る行為も見られ「アトラクションのように思われているのでは」との声もある。

 山寺観光協会の遠藤正明商工事務部長(63)と後藤麻衣さん(39)は「観光客視点ではキャッシュレス化を進めた方がいいだろう。しかし、信仰の場としての在り方を山寺全体で考え、精神文化を伝えていくことも大切だ」と話している。

画像: 山形新聞